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ミュージカルたるもの、まずは楽しく。実際、出演者たちの踊りと歌に魅了されて我を忘れてしまった。タイトルともなっているソフトパワーの面目躍如である。その極彩色の歌と踊りの向こう側に、この作品の主張がほの見える。ところが演出と表現の魔術に魅了されてしまった私は、トリップした誠や柔姫のようにわけがわからなくなってしまい、出演者たちがぶちまける諸現実らしきものに判断がつけられなくなってしまったのだ。おそらく、この作品をとおして観劇者が持ち帰る心象は人それぞれだろう。事実とは? 真実とは? 命の価値とは? 日頃、ソフトパワーに包囲されている私たち自身にも同じ問いがあって然るべきだろう。眩しい舞台の向こうに、虚実のわからなくなった現代人の影法師をみた気がする。
熊代亨
氏(精神科医 / 作家 / ブロガー)








